歩いて何分かかるか，ということから地図が生まれて，世界の地図が描かれてきた。が，もっと地球の地図は変わる。ネットワークの速度によって。

　スタンフォード大学線形加速器センターの研究者らが，インターネットで923Mbpsの転送速度記録を達成した。1万1000km離れた場所に4時間分のDVDムービーを光ファイバー回線を使って1分足らずで送信した。この実験の成果は1，2年のうちに素粒子物理学の分野の科学者向けのネットワークに応用されるかもしれない。

　地球の円周が約4万kmだから，4時間分のDVDムービー（6.7GBの容量だとのこと）が地球を1周して戻ってくるまで4分弱。と思いたいけど，物理的距離が4倍になったからといって，転送時間も4倍にはならないかな？　1秒間に923MBのデータが転送できるということは，30分の高画質MPEG4ムービーファイル（250MB）なら0.27秒。MP3ファイル1個（5MB）なら0.0054秒。まぁもちろん，この転送速度が家庭で使われるようなことは遠い未来になるだろうけど。

　1GBのデータがあって，これはネットワークで送れないからDVD-Rや外付けハードディスクにコピーして足で持っていく，ということになっていた。が，ネットワークの高速化はそんな煩わしさをなくし，そもそも中途半端な大きさのCD-RやDVD-R（さらには次世代なんて云われているブルーレイだって）たいした魅力はない。もうメディアという存在自体，消滅していいときがきている。ネットワークで転送できれば，それでいいのだ。速度こそ命。速度によって，外付けハードディスクを持って世界を1周するのに数日かかっていたのが，数分ですむ。新しい世界地図が，ネットワークによって描かれ，世界はもう一度形作られる。